【2022東京工業大学・第2問】
(1)考え方・解答
(1)考え方
3 文字における最大公約数
よくあるパターン問題としは、
2 文字 a、b の最大公約数が g のとき
互いに素な整数 s、t を 用いて、a=gs、b=gt とおく
と言う設定から問題をスタートしていきます。
上と同様に、3 文字 a、b、c の最大公約数を g として、
互いに素な整数 s、t、u を用いて、a=gs、b=gt、c=gu とおいても悪くはないのですが、条件として弱くなります。
その理由としては、3 文字が互いに素だからと言って、それぞれの 2 文字の関係までは分からないという点です。
《例》『 2 と 3 と 6 』について考えると、
この 3 つの数の最大公約数は 1 になりますが、
2 と 6 だけに注目すると最大公約数は 2 になりますし、
3 と 6 だけに注目すると最大公約数は 3 になります。
3 文字が互いに素という条件よりも、もっと強い条件で設定した方がよい!
そこで、
3 文字 a、b、c の最大公約数が 2 以上のとき
素数 p を用いて、a、b、c はすべて p の倍数
つまり、a=px、a=py、a=pz とおける
(1)の問題では、
最大公約数が 1 ではないと仮定し、(背理法の利用)
a+b+c=px、ab+bc+ca=py、abc=pz とおくことからスタート.

手が出なかった人は、ここからもう一度考えてみよう!
(1)解答
a+b+c、ab+bc+ca、abc の最大公約数が 1 でないと仮定する.
このとき、整数 x、y、z と、素数 p を用いて、
a+b+c=px ・・・①
ab+bc+ca=py ・・・②
abc=pz ・・・③ とおける.
③より、p は素数であるから、a、b、c の少なくとも 1 つは p の倍数となる.
a、b、c には対称性があるので、a が p の倍数としても一般性は失わない.
よって、整数 k を用いて a=pk ・・・④ とおける.
①、④より、b+c=px-pk=p(x-k) となり、b+c は p の倍数 ・・・⑤
②、④より、bc=py-pkb-cpk=p(y-bk-ck)
となり、bc は p の倍数 ・・・⑥
⑥より、b、c の少なくとも一方は p の倍数となり、対称性から b が p の倍数であるとして一般性を失わない.
このとき⑤から、上と同様に考えていくと、c も p の倍数であることが分かる.
よって b、c はともに p の倍数.
また、a も p の倍数であることから、条件の a、b、c の最大公約数が 1 であることに矛盾するため、a+b+c、ab+bc+ca、abc の最大公約数は 1 である.
(2)考え方
3 文字の対称式
a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の形、さらには(1)において基本対称式を扱った流れから、
・a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca)
・a^3+b^3+c^3-3abc=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)
の公式が頭の中に浮かんでほしい!
ユークリッド互除法の利用
【ユークリッドの互除法】
2 つの自然数 a 、b において、a を b で割ったときの商を q、余りを r とすると
a と b の最大公約数は、b と r の最大公約数に等しい
(2)解答
a^2+b^2+c^2=(a+b+c)^2-2(ab+bc+ca) より、ユークリッド互除法から
a+b+c と a^2+b^2+c^2 の最大公約数は、
a+b+c と 2(ab+bc+ca) の最大公約数に等しい
また、
a^3+b^3+c^3=(a+b+c)(a^2+b^2+c^2-ab-bc-ca)+3abc より、ユークリッド互除法から
a+b+c と a^3+b^3+c^3 の最大公約数は、
a+b+c と 3abc の最大公約数に等しい
つまり、a+b+c、a^2+b^2+c^2、a^3+b^3+c^3 の最大公約数は、
a+b+c、2(ab+bc+ca)、3abc の最大公約数に等しい.
(1)の結果から、a+b+c、2(ab+bc+ca)、3abc の最大公約数の候補は、
1 または 2 または 3 または 6 のいずれか.
a+b+c、2(ab+bc+ca)、3abc の最大公約数の候補は、
1 または 2 または 3 または 6 のいずれかであるので、それぞれを満たす a、b、c が存在するかどうかを考える.

現時点では答えの可能性(候補)です。
それぞれを満たす a、b、c が 1 つでも
存在すればOK!
とりあえず適当に実験をしてみましょう!
・(a,b,c)=(1,1,1) のとき
a+b+c=3、2(ab+bc+ca)=6、3abc=3 より、
この 3 つの最大公約数は 3 となる.
・(a,b,c)=(1,1,2) のとき
a+b+c=4、2(ab+bc+ca)=10、3abc=6 より、
この 3 つの最大公約数は 2 となる.
・(a,b,c)=(1,1,3) のとき
a+b+c=5、2(ab+bc+ca)=14、3abc=9 より、
この 3 つの最大公約数は 1 となる.
・(a,b,c)=(1,1,4) のとき
a+b+c=6、2(ab+bc+ca)=18、3abc=12 より、
この 3 つの最大公約数は 6 となる.

実験の結果、答えの候補の『 1 または 2 または 3 または 6 』 のすべてが存在することが確認できました!
したがって、求める値は、1 または 2 または 3 または 6
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