【2022熊本大学・医学部・第4問】
以下の問いに答えよ.
(問1) \(m≦n\) であって,\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) を満たす正の整数の組 \((m,n)\) を \(1\) つ求めよ.
(問2) \(m≦n\) であって,\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) を満たす正の整数の組 \((m,n)\) は,(問1) で求めた組に限ることを示せ.
考え方
考え方:整数問題の極意
(問1)については \(1\) つ求めれば良いので,とりあえず実験をしてみましょう!
具体的に実験することで、規則や法則をみつけ、答えを予想しましょう!
・\(m=1\) のとき
\(1≦n\) に対して,
\(n+2=_{1+n}C_{1}=n+1\) となり不適
・\(m=2\) のとき
\(2≦n\) に対して,
\(2n+2=_{2+n}C_{2}=\displaystyle\frac{(n+2)(n+1)}{2}\)
\(\iff\) \(4n+4=n^2+3n+2\)
\(\iff\) \(n^2-n-2=0\)
\(\iff\) \((n+1)(n-2)=0\)
\(2≦n\) より,\(n=2\)
よって,\((m,n)=(2,2)\)
とりあえず(問1)の答えは \((m,n)=(2,2)\) であることが分かりましたね!
次に(問2)の方針を考えるために,これ以降についても実験してみましょう!
・\(m=3\) のとき
\(3≦n\) に対して,
\(3n+2=_{3+n}C_{3}=\displaystyle\frac{(n+3)(n+2)(n+1)}{6}\) ・・・(☆)
\(n=3\) のとき
(左辺)\(=11\) ,(右辺)\(=20\) となり,(左辺)<(右辺)
\(n=4\) のとき
(左辺)\(=14\) ,(右辺)\(=35\) となり,(左辺)<(右辺)
・・・
(左辺)<(右辺)となりそうかな???
(☆)の左辺は \(1\) 次式,右辺は単調増加な \(3\) 次式であるので,\(n\) の値が大きくなると右辺の方が大きくなることはほぼほぼ明らかのようですね!
同様に \(m=4\) のときは \(1\) 次式と \(4\) 次式の比較,
一般に \(m\) のときは \(1\) 次式と \(m\) 次式の比較になるため,
\(m≧3\) のとき,(左辺)<(右辺)となることが予想できます!
\(m≧3\) のとき,(左辺)<(右辺)の証明は決して簡単ではありません。
最後まで証明が思いつかないとしても,実験することで方針が掴めるようになることが大切です!!
難しい整数問題は,最後まで完答できないことは多々あります。だからこそ,最後まで求められなくても,方針を記述するだけで部分点GET!!その差が合否の差に!!
解答・解説
(問1) \(m≦n\) であって,\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) を満たす正の整数の組 \((m,n)\) を \(1\) つ
\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) ・・・①
\((m,n)=(2,2)\) とすると,
(①の左辺) \(=6\) ,(①の右辺) \(=_{4}C_{2}=6\)
となり,\((m,n)=(2,2)\) は求める解の \(1\) つとなる.
よって,\((m,n)=(2,2)\)
(問2) \(m≦n\) であって,\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) を満たす正の整数の組 \((m,n)\) は,(問1) で求めた組に限る
\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) ・・・①
( ⅰ ) \(m=1\) のとき
(①の左辺) \(=n+2\) ,(①の右辺) \(=_{n+1}C_{1}=n+1\)
となり,左辺と右辺は一致しないため不適
( ⅱ ) \(m=2\) のとき
(①の左辺) \(=2n+2\) ,(①の右辺) \(=_{n+2}C_{2}=\displaystyle\frac{(n+2)(n+1)}{2}\)
であるから,
\(2(n+1)=\displaystyle\frac{(n+2)(n+1)}{2}\)
\(2≦n\) より \(n+1\not=0\) より
\(2=\displaystyle\frac{n+2}{2}\) \(\iff\) \(n=2\)
よって,\((m,n)=(2,2)\)
( ⅲ ) \(m≧3\) のとき
\(mn+2<_{m+n}C_{m}\) ・・・② を示す.
\(m≧3\) より,\(mn+2<mn+m=m(n+1)\)
\(_{m+n}C_{m}=\displaystyle\frac{(m+n)(m+n-1)\cdot\cdots\cdot(n+2)(n+1)}{m(m-1)\cdot\cdots\cdot 2\cdot 1}\)
\(=\left(1+\displaystyle\frac{n}{m}\right)\left(1+\displaystyle\frac{n}{m-1}\right)\cdot\cdots\cdot\left(1+\displaystyle\frac{n}{2}\right)\left(n+1\right)\)
\(n≧m≧3\) より,\(\displaystyle\frac{n}{m}≧1\),\(\displaystyle\frac{n}{m-1}>1\),\(\cdots\),\(\displaystyle\frac{n}{2}>1\) より
\(\left(1+\displaystyle\frac{n}{m}\right)\left(1+\displaystyle\frac{n}{m-1}\right)\cdot\cdots\cdot\left(1+\displaystyle\frac{n}{2}\right)\left(n+1\right)>2^{m-1}(n+1)\)
よって,\(_{m+n}C_{m}>2^{m-1}(n+1)\)
よって,②を示すためには,
\(m(n+1)<2^{m-1}(n+1)\)
\(\iff\) \(m<2^{m-1}\) ・・・③ を示せば良い.
③が成り立つことを数学的帰納法を用いて証明する.
(ア) \(m=3\) のとき
\(3<2^2=4\) となり③は成立.
(イ) \(m=k\) のとき③が成り立つと仮定する
つまり,\(k<2^{k-1}\) ・・・④ が成立すると仮定する
\(2^k-(k+1)=2\cdot 2^{k-1}-k-1>2k-k-1=k-1>0\)
(∵ ④,\(k≧3\)より )
ゆえに,\(m=k+1\) のとき成立する.
(ア),(イ)より③が成り立つ.
したがって,\(m≧3\) のとき \(mn+2<_{m+n}C_{m}\) ・・・②が成り立つ.
( ⅰ )〜( ⅲ )より,\(m≦n\) であって,\(mn+2=_{m+n}C_{m}\) を満たす正の整数の組 \((m,n)\) は,(問1) で求めた組に限る.
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