【2002東京大学・第4問・文理共通】
\(n\) は正の整数とする.\(x^{n+1}\) を \(x^2-x-1\) で割った余りを \(a_{n}x+b_{n}\) とおく.
(1) 数列 \(a_{n}\)、\(b_{n}\)、\(n = 1 , 2 , 3 , \cdots\) は
\(\begin{cases}a_{n+1}=a_{n}+b_{n}\\b_{n+1}=a_{n}\end{cases}\)
を満たすことを示せ.
(2) \(n = 1 , 2 , 3 , \cdots\) に対して、 \(a_{n}\)、\(b_{n}\) は共に正の整数で、互いに素であることを証明せよ.
(1) 考え方
たしかめ算について
小学生で割り算を学習した際に、「たしかめ算」を学習したことかと思います。
例:\(14\) を \(4\) で割ると、商が \(3\) で余りが \(2\) のとき
『 \(14=4\times3+2\) 』とかける式のことです.
一般に、『割られる数(式)=割る数(式)×商+余り』の関係が成り立ちます.
こんな当たり前だと思うかもしれませんが、ちなみに「たしかめ算」を利用して考えるのが「剰余の定理」や「因数定理」になります.
本問においても解答の1行目は「たしかめ算」からスタートです!
(1) 解答
\(x^{n+1}\) を \(x^2-x-1\) で割った商を \(Q(x)\) とおく.
このとき、
\(x^{n+1}=(x^2-x-1)\cdot Q(x)+a_{n}x+b_{n}\) ・・・① とおける.
①の両辺を \(x\) 倍すると、
\(x^{n+2}=x(x^2-x-1)\cdot Q(x)+a_{n}x^2+b_{n}x\)

\(a_{n}x^2+b_{n}x\) は \(x^2-x-1\) でまだ割れる!
ここで、\(a_{n}x^2+b_{n}x=a_{n}(x^2-x-1)+(a_{n}+b_{n})x+a_{n}\) であるから、
\(x^{n+2}=x(x^2-x-1)\cdot Q(x)+a_{n}(x^2-x-1)+(a_{n}+b_{n})x+a_{n}\)
したがって、
\(x^{n+2}=(x^2-x-1)\left\{x\cdot Q(x)+a_{n}\right\}+(a_{n}+b_{n})x+a_{n}\) ・・・②
②において、\((a_{n}+b_{n})x+a_{n}\) は高々 \(1\) 次式であるから、これ以上 \(x^2-x-1\) では割れない.
ゆえに、\(x^{n+2}\) を \(x^2-x-1\) で割った余りが \((a_{n}+b_{n})x+a_{n}\) であるから、
\(\begin{cases}a_{n+1}=a_{n}+b_{n}\\b_{n+1}=a_{n}\end{cases}\)
が成立する.
(2) 考え方
(2)の問題は、
Ⅰ. \(a_{n}\)、\(b_{n}\) は共に正の整数であることの証明.
Ⅱ. \(a_{n}\)、\(b_{n}\) は互いに素であることを証明.
の2つの問題がある.もちろん同時に扱える方はそれに越したことはないが、ここでは丁寧に、それぞれの証明を考える.
\(n = 1 , 2 , 3 , \cdots\)(自然数) に対しての証明
⇒ 数学的帰納法を利用
(2) 解答
Ⅰ. \(a_{n}\)、\(b_{n}\) は共に正の整数であることの証明
数学的帰納法を用いて証明する.
(ⅰ) \(n=1\) のとき
\(x^2=(x^2-x-1)\times 1 +x+1\) より、\(x^2\) を \(x^2-x-1\) で割った余りは \(x+1\) であるから、\(a_{1}=1\)、\(b_{1}=1\)
よって共に正の整数となる.
(ⅱ) \(n=k\) のとき
\(a_{k}\)、\(b_{k}\) が共に正の整数となると仮定する.
(1)の結果より、
\(\begin{cases}a_{k+1}=a_{k}+b_{k}\\b_{k+1}=a_{k}\end{cases}\)
が成立するので、仮定より \(a_{k+1}\)、\(b_{k+1}\) は共に正の整数となる.
(ⅰ)、(ⅱ)より、すべての自然数 \(n\) において、\(a_{n}\)、\(b_{n}\) は共に正の整数である
Ⅱ. \(a_{n}\)、\(b_{n}\) は互いに素であることを証明
(ア) \(n=1\) のとき
(ⅰ)の結果より、\(a_{1}=1\)、\(b_{1}=1\)
よって \(a_{1}\)、\(b_{1}\) は互いに素である.
(イ) \(n=k\) のとき
\(a_{k}\)、\(b_{k}\) が互いに素であると仮定する.
ここで、\(a_{k+1}\)、\(b_{k+1}\) の最大公約数を \(g≧2\) とすると、
\(a_{k+1}=gs\)、\(b_{k+1}=gt\) ・・・③ とおける.
ただし、\(s , t\) は互いに素な正の整数.
(1)の結果より、
\(\begin{cases}a_{k+1}=a_{k}+b_{k}\\b_{k+1}=a_{k}\end{cases}\)
が成立するので、③を代入して
\(gs=a_{k}+b_{k}\)、\(gt=a_{k}\)
よって、\(b_{k}=gs-a_{k}=gs-gt=g(s-t)\)
したがって、\(b_{k}\) は \(g\) を約数にもつ.
また、\(gt=a_{k}\) より \(a_{k}\) は \(g\) を約数にもつ.
よって、\(a_{k}\)、\(b_{k}\) は共に約数 \(g≧2\) を持つが、
これは、\(a_{k}\)、\(b_{k}\) が互いに素であることに矛盾する.
したがって、\(a_{k+1}\)、\(b_{k+1}\) は互いに素となる.
(ア)、(イ)よりすべての自然数 \(n\) において、\(a_{n}\)、\(b_{n}\) は互いに素である


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