【問題】
\(n\) 人で 1 回じゃんけんを行ったとき、「あいこ」になる確率を求めよ.
※以下では表記簡略化のため、
「グー」☞「グ」、「チョキ」☞「チ」、「パー」☞「パ」とする.
\(n\) に関する(一般化された)問題の考え方について
(例1) \(n=2\) のとき
2 人でじゃんけんを行うとき、手の出方は全部で \(3^2=9\) 通り
あいことなるのは、
(グ,グ) 、 (チ,チ) 、 (パ,パ) の 3 通りであるから
\(\displaystyle\frac{3}{9}=\displaystyle\frac{1}{3}\)
(例2) \(n=3\) のとき
3 人でじゃんけんを行うとき、手の出方は全部で \(3^3=27\) 通り
あいことなるのは、
( ⅰ ) 3 人とも同じ手を出すとき
(グ,グ,グ) 、 (チ,チ,チ) 、 (パ,パ,パ) の 3 通り
( ⅱ ) 3 人がバラバラの手を出したとき
(グ,チ,パ) の並び替えを考えると、\(3!=6\) 通り
よって、\(3+6=9\) 通り
したがって、\(\displaystyle\frac{9}{27}=\displaystyle\frac{1}{3}\)
具体例から一般化へ
\(n\) 人でじゃんけんを行うとき、手の出方は全部で \(3^n\) 通り
あいことなるのは・・・??
滅茶苦茶たくさんある・・・
上の (例1)、(例2) の考え方では、一般化するのは不可能・・・.
👉 (例1)、(例2) の考え方が一般化するのに向いていないため、違う方針で考える必要がある
場合の数・確率の問題の解法2つ
👉 正攻法 と 余事象
先ほどは、正攻法(そのまま)で考えてみたが一般化できなかった.
よって2つ目の解法である「余事象」で考える.
余事象を用いて、\(n=2 , 3\) の具体例を考える
じゃんけん問題
・(誰が)×(何で) を考える
・分母は \(3^{人数}\)
(例1) \(n=2\) のとき
・1 人が勝つ確率について
(誰が)・・・2 人のうちどちらか 1 人が勝つ
つまり、\(_{2}\rm{C}_{1}=2\) 通り
(何で)・・・「グ」、「チ」、「パ」のどれで勝つかの 3 通り
したがって、\(n=2\) のとき「あいこ」となる確率は
\(1-\displaystyle\frac{2\times 3}{3^2}=\displaystyle\frac{1}{3}\)
(例2) \(n=3\) のとき
・1 人が勝つ確率について
(誰が)・・・3 人のうち 1 人が勝つ
つまり、\(_{3}\rm{C}_{1}=3\) 通り
(何で)・・・「グ」、「チ」、「パ」のどれで勝つかの 3 通り
・2 人が勝つ確率について
(誰が)・・・3 人のうち 2 人が勝つ
つまり、\(_{3}\rm{C}_{2}=3\) 通り
(何で)・・・「グ」、「チ」、「パ」のどれで勝つかの 3 通り
したがって、\(n=3\) のとき「あいこ」となる確率は
\(1-\displaystyle\frac{3\times 3+3\times 3}{3^3}=\displaystyle\frac{1}{3}\)
☆一般化のために☆
\(n=2 , 3\) を考えたが、答えを出すことが目的ではない.
余事象を使った考え方をもとに、一般化につながるような式で表すと、
\(n=3\) のとき
\(1-\displaystyle\frac{(_{3}\rm{C}_{1}+_{3}\rm{C}_{2})\times 3}{3^3}\)
これを一般化すると、
\(1-\displaystyle\frac{(_{n}\rm{C}_{1}+_{n}\rm{C}_{2}+\cdots+_{n}\rm{C}_{n-1})\times 3}{3^n}\)
つまり、
\(_{n}\rm{C}_{1}+_{n}\rm{C}_{2}+\cdots+_{n}\rm{C}_{n-1}\)
が計算できれば終わりである.
\(_{n}\rm{C}_{r} \) の和
👉 二項定理で考える
👆シグマを使わない場合と使った場合の二項定理の公式
二項定理より
\({(a+b)^{n}=_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{0}a^{n}+_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{1}a^{n-1}b+_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{2}a^{n-2}b^{2}+\cdots+_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{n-1}ab^{n-1}+_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{n}b^{n}}\)
この式に \(a=b=1\) を代入すると、
\(\boldsymbol{2^{n}=_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{0} +_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{1} +_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{2} +\cdots+_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{n-1} +_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{n}}\)
\({2^{n}=_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{0} +_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{1} +_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{2} +\cdots+_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{n-1} +_{n}\hspace{-1.4mm}{\rm C}_{n}}\)
はよく利用する公式の形だね!
二項定理の公式と一緒に覚えておこう!
よって、
\(_{n}\rm{C}_{1}+_{n}\rm{C}_{2}+\cdots+_{n}\rm{C}_{n-1}\)
\(=2^n-_{n}\rm{C}_{0}-_{n}\rm{C}_{n}=2^n-2\)
したがって求める確率は、
\(1-\displaystyle\frac{(2^n-2)\times 3}{3^n}\)
\(=1-\displaystyle\frac{2^n-2}{3^{n-1}}\)
【別解】あいこの確率
別解のお話をする前に準備の問題です!
準備の問題
\(6\) 人をA、B、Cの 3 部屋に分ける方法は?
ただし、各部屋には少なくとも 1 人は入るものとする.
(※数学Aの4STEPから抜粋)
準備の問題の解答
6 人のそれぞれについて、A、B、Cの 3 通りの部屋の選び方があるから、
6 人の分け方は \(3^6\) 通り
このうち、
・1 部屋だけに 6 人全員が入るとき
6 人全員がA or B or C に入る3 通り
・2 部屋だけに 6 人が入るとき
どの部屋に入るかは、
\(_{3}\rm{C}_{2}=3\) 通り(AB or BC or CA のこと)
仮にA,Bに 6 人が入るとき、
6 人のそれぞれについて、A、Bの 2 通りの部屋の選び方があるから、
6 人の分け方は \(2^6\) 通り
しかしこの中には全員がA or B に 6 人が入るときがあるので、
\(2^6-2\) 通り
したがって、\(3^6-3-3(2^6-2)\) 通り
・Aの部屋 → 「グー」
・Bの部屋 → 「チョキ」
・Cの部屋 → 「パー」
に置き換え、
じゃんけんで「勝負がつく」場合を考えると、
全員が 6 人の出した手が 2 種類 (2 部屋だけに 6 人が入るとき) と考えることが出来るので、
\(3(2^6-2)\) 通り
したがって「あいこ」となる場合は、それ以外を考えればよいので、
\(3^6-3(2^6-2)\)
さらに、
・6 人 →\(n\) 人 と一般化して考えると、
「あいこ」となる場合は、
\(3^n-3(2^n-2)\)
したがって、「あいこ」となる確率は、
\(\displaystyle\frac{3^n-3(2^n-2)}{3^n}=1-\displaystyle\frac{2^n-2}{3^{n-1}}\)
と考えることが出来る.
最後に
ジャンケンで「あいこ」になる確率という身近なテーマを用いて、
・一般化の考え方
・二項定理
・部屋割り問題
など、様々な視点で考えてみました。
どれを1つとっても重要なテーマになります。
この1問を通して、ただ答えが出せるだけの勉強でなく、どのように考えて問題を解いていくのか、1つ1つの知識を組み合わせる演習にしてください!
場合の数・確率が苦手な人はぜひ
【場合の数】何となくでは絶対にダメ!考え方、規則、数え方を正しく学ぶ1問
も読んで考え方を勉強してください。
また、自分の勉強として、ただ問題演習を行うだけの問題集ではない、どのように考えて問題にアプローチするかが非常に詳しく描かれた参考書の「ハッとめざめる確率」で勉強してみてください。
私自身も塾講師を始める前に読みましたが、現役生の時に読んでおけばよかったと後悔しています。
数学の参考書?と思うぐらい文字数が多く、何方かと言えば読み物のような参考書になっています。
この1冊で場合の数・確率の考え方の総まとめができます!
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