【2020熊本大学・医学部・第3問】
以下の問いに答えよ.
(問1) \(x\) が自然数のとき,\(x^2\) を \(5\) で割ったときの余りは \(0\),\(1\),\(4\) のいずれかであることを示せ.
(問2) \(x^2+5y^2=2z^2\) を満たす自然数 \(x\),\(y\),\(z\) の組は存在しないことを示せ.
無限下降法
無限下降法とは・・・
背理法の一種で,自然数の部分集合には必ず最小の元が存在する性質を利用した証明方法.
(※ 17 世紀の数学者フェルマーによって始められた)
無限下降法の考え方・解法の流れ
ある自然数 \(n_{1}\) に対し,命題 \(P(n_{1})\) が成り立つと仮定する.
自然数 \(n_{1}\) より小さい自然数 \(n_{2}\) に対して,命題 \(P(n_{2})\) が成り立つことを示す.
これを繰り返すことにより,命題 \(P(n)\) に対し自然数の無限列 \(n_{1}>n_{2}>n_{3}>\cdots\) で成り立つが,これは自然数の部分集合には最小の元が存在することに矛盾する.
合同式について
整数問題を扱う上で,合同式は必須アイテムです!
合同式を学習していない方,自信がない方は,
を参考にしてください!
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解答・解説
(問1)
以下,\(mod 5\) として考える.
・\(x≡0\) のとき,\(x^2≡0\)
・\(x≡\pm 1\) のとき,\(x^2≡1\)
・\(x≡\pm 2\) のとき,\(x^2≡4\)
したがって題意は示された.
(問2)
以下,\(mod 5\) として考える.
\(x^2+5y^2=2z^2\) のとき
\(x^2+5y^2≡2z^2\)
よって,\(x^2≡2z^2\) ・・・①
(問1)より,\(x^2≡0,1,4\),\(z^2≡0,1,4\) より
①を満たすのは,\(x^2≡z^2≡0\) のときのみ
よって \(x\),\(z\) は \(5\) の倍数となるので,
整数 \(m\),\(n\) を用いて
\(x=5m\),\(y=5n\) とおける.
このとき,
\((5m)^2+5y^2=2\cdot(5z)^2\)
\(\iff\) \(y^2=5(2n^2-m^2)\)
よって \(y^2\) は \(5\) の倍数となるので,\(y\) も \(5\) の倍数となる.
したがって,\(x^2+5y^2=2z^2\) を満たす自然数 \(x\),\(y\),\(z\) の組が存在するとき,いずれも \(5\) の倍数となる.
よって,自然数 \(a\),\(b\),\(c\) を用いて \(x=5a\),\(y=5b\),\(z=5c\) とおくと
\(x^2+5y^2=2z^2\) より
\((5a)^2+5(5b)^2=2(5c)^2\)
よって,\(a^2+5b^2=2c^2\)
同様に,\(a\),\(b\),\(c\) は \(5\) の倍数となるので,
自然数 \(a^{\prime}\),\(b^{\prime}\),\(c^{\prime}\) を用いて \(a=5a^{\prime}\),\(b=5b^{\prime}\),\(c=5c^{\prime}\) とおける.
これは何度も繰り返すことができ,値はどんどん小さくなる.
よって自然数が最小を持つこと矛盾する.
したがって,\(x^2+5y^2=2z^2\) を満たす自然数 \(x\),\(y\),\(z\) の組は存在しない.
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