【2022大分大学・医学部・第1問】
関数 \(f(x)=\log{\displaystyle\frac{e^x}{x}}\) を用いて,\(a_{1}=2\),\(a_{n+1}=f(a_{n})\) によって数列 \(\left\{a_{n}\right\}\) が与えられている.ただし対数は自然対数である.以下の問に答えなさい.
(1) \(1≦x≦2\) のとき,\(0≦f(x)-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)\) が成立することを示しなさい.
(2) \(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} a_{n}\) を求めなさい.
(3) \(b_{1}=a_{1}\),\(b_{n+1}=a_{n+1}b_{n}\) によって与えられる数列 \(\left\{b_{n}\right\}\) の極限を求めなさい.
(1)考え方・解答・解説
(1) \(1≦x≦2\) のとき,\(0≦f(x)-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)\)
不等式の証明なので,
\(\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)-\left\{f(x)-1\right\}\) を微分して・・・
結果的に \(1≦x≦2\) における最小値が \(0\) 以上になることを示せばいいですか??
不等式の証明の解答の王道はそれで間違いありませんよ!
しかし今回の問題は,
『\(f(x)-1\)』『\(x-1\)』という形にぜひ注目できるようになって欲しい問題です!
平均値の定理
関数 \(f(x)\) が閉区間 \([a,b]\) で連続で,
開区間 \((a,b)\) で微分可能ならば,
\(\displaystyle\frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f^{\prime}(c)\) , \(a<c<b\)
を満たす実数 \(c\) が存在する.
平均値の定理は,不等式の証明や極限を求めるときに使用されます!
差がつくテーマになりますので,常に頭の片隅には「平均値の定理」を考える癖を!
(1)解答・解説
\(0≦f(x)-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)\) ・・・①
( ⅰ ) \(x=1\) のとき
\(f(1)-1=\log{\displaystyle\frac{e}{1}}-1=0\) ,\(\displaystyle\frac{1}{2}(1-1)=0\) より,①は成り立つ.
( ⅱ ) \(1<x≦2\) のとき
関数 \(f(x)\) は \(1≦x≦2\) で連続で,\(1<x<2\) で微分可能であるから,平均値の定理より
\(\displaystyle\frac{f(x)-1}{x-1}=f^{\prime}(c)\) ・・・②
\(1<c<2\) ・・・③ を満たす \(c\) が存在する.
ここで,\(f(x)=\log{\displaystyle\frac{e^x}{x}}=\log{e^x}-\log{x}=x-\log{x}\) より
\(f^{\prime}(c)=1-\displaystyle\frac{1}{c}\)
③より,\(\displaystyle\frac{1}{2}<\displaystyle\frac{1}{c}<1\) なので
\(0<1-\displaystyle\frac{1}{c}<\displaystyle\frac{1}{2}\)
②より,
\(0<\displaystyle\frac{f(x)-1}{x-1}<\displaystyle\frac{1}{2}\)
\(x>1\) より \(x-1>0\) なので \(0<f(x)-1<\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)\)
したがって( ⅰ ),( ⅱ )より
\(1≦x≦2\) のとき,\(0≦f(x)-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)\) が成立
(2)考え方・解答・解説
(2) \(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} a_{n}\)
方針が見えないときは,今までに何を求めてきたのか,どのような条件が与えられているのか(まだ使っていない条件はないか?)など考えるように!
(1)で\(0≦f(x)-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(x-1)\)
またまだ使用していない条件として,\(a_{n+1}=f(a_{n})\) がありますね!
とりあえず,\(x=a_{n}\) を代入してみると,はさみうちの原理を利用する有名な問題に帰着します!
(2)解答・解説
数学的帰納法を用いて,自然数 \(n\) に対し,
\(0≦a_{n}-1≦\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{n-1}\) ・・・④
が成り立つことを示す.
( ⅰ ) \(n=1\) のとき
\(a_{1}-1=1\) ,\(\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^0=1\) より成立.
( ⅱ ) \(n=k\) のとき④が成り立つと仮定
つまり,\(0≦a_{k}-1≦\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{k-1}\) ・・・⑤
⑤より,\(1≦a_{k}≦1+\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{k-1}≦2\) であるから,
(1)の結果に \(n=a_{k}\) を代入すると
\(0≦f(a_{k})-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(a_{k}-1)\)
⑤より,\(0≦a_{k+1}-1≦\displaystyle\frac{1}{2}(a_{k}-1)≦\displaystyle\frac{1}{2}\cdot\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{k-1}=\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{k}\)
よって,\(0≦a_{k+1}-1≦\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{k}\) となり \(n=k+1\) のときも成り立つ.
( ⅰ ),( ⅱ )より,\(0≦a_{n}-1≦\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{n-1}\) ・・・④ が成立.
ここで,\(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}\left(\displaystyle\frac{1}{2}\right)^{n-1}=0 \) であるから,はさみうちの原理より
\(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} (a_{n}-1)=0\)
したがって,\(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty}a_{n}=1\)
(3)解答・解説
\(b_{1}=a_{1}\),\(b_{n+1}=a_{n+1}b_{n}\) より
\(b_{n}=a_{n}\cdot a_{n-1}\cdot\cdots a_{2}\cdot a_{1}\) となる.
また,\(f(x)=x-\log{x}\),\(a_{n+1}=f(a_{n})\) より
\(a_{n+1}=a_{n}-\log{a_{n}}\)
\(=(a_{n-1}-\log{a_{n-1}})-\log{a_{n}}\)
\(\cdots\)
\(=a_{1}-(\log{a_{1}}+\cdots+\log{a_{n}})\)
\(=a_{1}-\log{(a_{1}\times \cdots \times a_{n})}\)
よって,\(a_{n+1}=2-\log{b_{n}}\) より
\(b_{n}=e^{2-a_{n+1}}\)
(2)の結果から,
\(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} b_{n}=\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} e^{2-a_{n+1}}=e\)
したがって,\(\displaystyle\lim_{n\rightarrow\infty} b_{n}=e\)
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