【2021室蘭工大】
自然数 \(n\) に対して,関数 \(g_{n}(x)\) を \(g_{n}(x)=1+\displaystyle\sum_{k=1}^{n}{\displaystyle\frac{x^k}{k!}}\) と定める.\(e\) を自然対数の底とする.
(1) \(x>0\) のとき,\(e^x>1+x\) となることを示せ.
(2) \(x>0\) のとき,\(e^x>1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2}\) となることを示せ.
(3) \(x>0\) のとき,すべての自然数 \(n\) に対して,\(e^x>g_{n}(x)\) となることを,数学的帰納法によって示せ.
解答・解説
(1) \(x>0\) のとき,\(e^x>1+x\)
\(f(x)=e^x-1-x\) とおく.
\(f^{\prime}(x)=e^x-1\)
\(x>0\) のとき,\(f^{\prime}(x)>0\) なので
\(f(x)\) は単調に増加する.
よって,\(f(x)>f(0)=0\)
したがって,\(x>0\) のとき \(e^x>1+x\)
(2) \(x>0\) のとき,\(e^x>1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2}\)
\(h(x)=e^x-1-x-\displaystyle\frac{x^2}{2}\) とおく.
\(h^{\prime}(x)=e^x-1-x=f(x)>0\) ( (1) より )
\(h(x)\) は単調に増加する.
よって,\(h(x)>h(0)=0\)
したがって,\(x>0\) のとき \(e^x>1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2}\)
(3) \(x>0\) のとき,\(e^x>1+\displaystyle\sum_{k=1}^{n}{\displaystyle\frac{x^k}{k!}}\)
\(G_{n}(x)=e^x-g_{n}(x)\) とおく.
\(x>0\) のとき,すべての自然数 \(n\) に対して,\(G_{n}(x)>0\) が成り立つことを数学的帰納法を用いて示す.
( ⅰ ) \(n=1\) のとき
\(G_{1}(x)=e^x-1-x=f(x)>0\) ( (1) より )
よって,\(n=1\) のとき成り立つ.
( ⅱ ) \(n=m\) ( \(m≧1\) ) のとき,\(G_{m}(x)>0\) が成り立つと仮定する.
つまり,\(G_{m}(x)=e^x-\left(1+\displaystyle\sum_{k=1}^{m}{\displaystyle\frac{x^k}{k!}}\right)>0\) ・・・①
が成り立つと仮定する.
\(n=m+1\) のときを考えると
\(G_{m+1}(x)=e^x-\left(1+\displaystyle\sum_{k=1}^{m+1}{\displaystyle\frac{x^k}{k!}}\right)\) より
\(G_{m+1}^{\prime}(x)=e^x-\displaystyle\sum_{k=1}^{m+1}{\displaystyle\frac{kx^{k-1}}{k!}}\)
\(=e^x-\displaystyle\sum_{k=1}^{m+1}{\displaystyle\frac{x^{k-1}}{(k-1)!}}\)
\(=e^x-\left(1+\displaystyle\sum_{k=1}^{m}{\displaystyle\frac{x^k}{k!}}\right)=G_{m}(x)\)
よって②より,\(G_{m+1}^{\prime}(x)=G_{m}(x)>0\) であるから,
\(G_{m+1}(x)\) は単調に増加する.
ゆえに,\(G_{m+1}(x)>G_{m+1}(0)=0\)
したがって,\(n=m+1\) のときも成り立つ.
( ⅰ ),( ⅱ )より \(x>0\) のとき,すべての自然数 \(n\) に対して \(G_{m}(x)>0\) が成り立つ
つまり,\(x>0\) のとき,すべての自然数 \(n\) に対して,\(e^x>g_{n}(x)\) となる.
\(n\rightarrow\infty\) のとき,
つまり,\(e^x=1+x+\displaystyle\frac{x^2}{2!}+\displaystyle\frac{x^3}{3!}+\displaystyle\frac{x^4}{4!}+\cdots\)
となることが分かっています!
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