【2004神戸大学・後期】
\(f(x)=x^2+ax+b\) とする.次の問に答えよ.
(1) 整式 \(P(x)\) を \(f(x)\) で割った余りを \(cx+d\)、\(xP(x)\) を \(f(x)\) で割った余りを \(qx+r\) とするとき、\(q\) と \(r\) を \(a\)、\(b\)、\(c\)、\(d\) を用いて表せ.
(2) \(x^{2004}\) を \(f(x)\) で割った余りが \(2x+1\)、\(x^{2005}\) を \(f(x)\) で割った余りが \(x+2\) となるような \(a\)、\(b\) はない.その理由を述べよ.
考え方・方針
剰余の定理と因数定理は覚えるな!
剰余の定理
整式 \(P(x)\) を \(1\) 次式 \(x-k\) で割ったときの余りは \(P(k)\)
因数定理
\(1\) 次式 \(x-k\) が整式 \(P(x)\) の因数である \(iff\) \(P(k)=0\)
剰余の定理と因数定理について、絶対に公式の丸暗記はやめましょう!
結局のこの定理が言いたいことは、小学生の割り算を学習した際に習った、
「たしかめ算」です。
例:\(14\) を \(4\) で割ると、商が \(3\) で余りが \(2\) のとき
『 \(14=4\times3+2\) 』とかける式のことです.
一般に、『割られる数(式)=割る数(式)×商+余り』の関係が成り立ちます.
こんなこと当たり前だと思うかもしれませんが、この当たり前を当たり前に使えるかどうかは別の話。「たしかめ算」から派生してきてもの「剰余の定理」や「因数定理」になります.
つまり、「たしかめ算」さえしっかりと使えれば問題なし!
むしろ使用用途が限定的な剰余の定理や因数定理だけを覚えていると、解けない問題が出てきます。
背理法の利用
(2)については、『 \(a\)、\(b\) はない』ことを示す問題であるが、
『 \(a\)、\(b\) が存在する』と仮定し、(1)の結果を利用しながら矛盾を導いていく.
解答
(1)
整式 \(P(x)\) を \(f(x)=x^2+ax+b\) で割った商を \(Q(x)\) とすると、
\(P(x)=f(x)Q(x)+cx+d\) ・・・①
①の両辺を \(x\) 倍すると、
\(xP(x)=xf(x)Q(x)+cx^2+dx\) ・・・②
②の右辺 を \(f(x)\) で割った余りは、\(cx^2+dx\) を \(f(x)\) で割った余りに等しい
ここで、
\(cx^2+dx=c(x^2+ax+b)-acx-bc+dx=cf(x)-(ac-d)x-bc\)
より、②に代入すると
\(xP(x)=xf(x)Q(x)+cf(x)-(ac-d)x-bc\\=f(x)\left\{xQ(x)+c\right\}-(ac-d)x-bc\)
これは、\(xP(x)\) を \(f(x)\) で割った余りが \(-(ac-d)x-bc\) であることを表すので、
条件から、\(q=-ac+d\)、\(r=-bc\)
(2)
(1)の結果において、\(P(x)=x^{2004}\)、\(c=2\)、\(d=1\)、\(q=1\)、\(r=2\) の場合である.
ここで、この場合を満たす \(f(x)\) が存在すると仮定すると、(1)の結果より
\(1=-2a+1\)、\(2=-2b\)
よって、\(a=0\)、\(b=-1\)
つまり、\(f(x)=x^2-1\) となる.
このとき、①より
\(x^{2004}=(x^2-1)Q(x)+2x+1\) となるが、
この式の両辺に \(x=1\) を代入すると、
\(1=3\) となり成り立たず、矛盾する.
したがって、題意を満たす \(a\)、\(b\) はない.
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