2022九州大学・理【整数問題】
整数問題のPoint
まず整数問題すべてに共通して言えるPointは
- 積の形に変形
- 条件から範囲を絞る
- 倍数や余りに注目
整数問題の多くが、上の1から3のいずれかで処理できます。
(1)考え方・解答
(1)考え方
方針がつかめない場合については、とにかく実験しましょう!
具体的に実験することで、規則や法則をみつけ、答えを予想しましょう!
[範囲の絞り込み]
\(n^4=1+210m^2\) ・・・①
\(m\)、\(n\) は自然数なので、\(m≧1\) より
\(n^4=1+210m^2≧211\)
よって \(n≧4\) となる.
[実験]
・\(n=4\) のとき
\(\left(\displaystyle\frac{n^2+1}{2},\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\right)=\left(\displaystyle\frac{17}{2},\displaystyle\frac{15}{2}\right)\) となり、
整数にならないため不適
☞ \(n\) が偶数のとき
\(n^2+1\)、\(n^2-1\) は奇数となり、\(\displaystyle\frac{n^2+1}{2}\)、\(\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\) は整数とならない
☞ \(n\) は奇数となることを示さなければいけない
・\(n=5\) のとき
\(\left(\displaystyle\frac{n^2+1}{2},\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\right)=(13,12)\)
・\(n=7\) のとき
\(\left(\displaystyle\frac{n^2+1}{2},\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\right)=(25,24)\)
・\(n=9\) のとき
\(\left(\displaystyle\frac{n^2+1}{2},\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\right)=(41,40)\)
☞ \(n\) が奇数のとき、\(\left(\displaystyle\frac{n^2+1}{2},\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\right)\) は連続する \(2\) 整数となる
☞ 連続する \(2\) 整数が互いに素となることを示せばよい
したがって、
題意を示すためには次の \(2\) つを示せばよい
(ⅰ) \(n\) は奇数
(ⅱ) 連続する \(2\) 整数が互いに素
(1)解答
\(n^4=1+210m^2\) ・・・① より
\((n^2+1)(n^2-1)=210m^2\) ・・・②
\(n\) が偶数と仮定すると、\(n^2+1\)、\(n^2-1\) はともに奇数となり、
②の左辺は奇数となる.しかし②の右辺は偶数であるから、矛盾する.
したがって、\(n\) は奇数となる.
\(n\) が奇数のとき、\(\displaystyle\frac{n^2+1}{2}\)、\(\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\) はともに整数となる.
次に、\(N\) を整数として、
\(N=\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\) とおくと、\(\displaystyle\frac{n^2+1}{2}=N+1\) となる.
連続する2つの自然数 \(N , N+1\) の最大公約数を \(g\) とおく.
\(\begin{cases}N=ga\\N+1=gb\end{cases}\)
ただし、\(a , b\) は互いに素な自然数で \(a<b\) とおける.
\(2\) 式から \(N\) を消去すると、
\(g(b-a)=1\)
\(b-a>0\)、\(b-a\) は自然数より、\(g=1\)
よって連続する2つの自然数 \(N\)、\(N+1\) は互いに素となる
「連続する2つの整数は互いに素である」ことは1つの性質として覚えておこう!
したがって、\(\displaystyle\frac{n^2-1}{2}\)、\(\displaystyle\frac{n^2+1}{2}\) は互いに素な整数となる.
(2)考え方・解答
(2)考え方
\(168=2^3\times3\times7\) であり、\(2^3\)、\(3\)、\(7\) は互いに素であるから
\(n^2-1\) が「\(2^3\) の倍数」かつ「\(3\) の倍数」かつ「\(7\) の倍数」を示せばよい
「\(2^3\) の倍数」について
(1)で \(n\) は奇数であることを確認したので、\(n=2k+1\) として・・・
「\(3\) の倍数」、「\(7\) の倍数」について
②より、\((n^2+1)(n^2-1)=3\times 7\times 10m^2\) なので、
\(n^2+1\)、\(n^2-1\) の少なくとも一方は、\(3\) の倍数、\(7\) の倍数であることは分かる.
[方針]
・\(n^2-1\) が直接 \(3\) や \(7\) の倍数であることを示す
・\(n^2+1\) が \(3\) や \(7\) の倍数でないことを示す
のいずれかで示すことができる.
また、
mod 3 や mod 7 を利用して考えることで、計算処理が楽になる
※合同式を学習していない、不安がある方は、
合同式は整数問題を扱う上で必須アイテム!しっかりと使えるようにしておきましょう!
(2)解答
「\(2^3\) の倍数」について
(1)で \(n\) は奇数であることが分かったので、整数 \(k\) を用いて
\(n=2k+1\) とおける.
\(n^2-1=(2k+1)^2-1=4k(k+1)\) となり、\(k(k+1)\) は連続する \(2\) 整数の積であるから、\(2\) の倍数となる.
つまり、\(n^2-1\) は \(8\) の倍数となる.
「\(3\) の倍数」について
mod 3 として考える.
・\(n≡0\) のとき \(n^2+1≡1\)
・\(n≡\pm1\) のとき \(n^2+1≡2\)
であるから、\(n^2+1\) は \(3\) の倍数にならない
②より、\((n^2+1)(n^2-1)=3\times 7\times 10m^2\) であるから、
\(n^2-1\) が \(3\) の倍数となる.
「\(7\) の倍数」について
mod 7 として考える.
・\(n≡0\) のとき \(n^2+1≡1\)
・\(n≡\pm1\) のとき \(n^2+1≡2\)
・\(n≡\pm2\) のとき \(n^2+1≡5\)
・\(n≡\pm3\) のとき \(n^2+1≡3\)
であるから、\(n^2+1\) は \(7\) の倍数にならない
②より、\((n^2+1)(n^2-1)=3\times7\times10m^2\) であるから、
\(n^2-1\) が \(7\) の倍数となる.
\(2^3\)、\(3\)、\(7\) は互いに素であるから
\(n^2-1\) が「\(2^3\) の倍数」かつ「\(3\) の倍数」かつ「\(7\) の倍数」
よって、\(n^2-1\) は \(168\) の倍数となる.
(3)考え方・解答
(3)考え方
「①を満たす自然数の組を \(1\) つ求めよ」であるから、見つければ記述云々は無しに終了である.つまり、適当に代入し、偶然でも見つかればそれでOK!
ただ闇雲に探すのは大変であるから、(1)、(2)の流れから代入する値を絞り込みしていく.
(2)より、整数 \(x\) を用いて、
\(n^2=168x+1\) とおける.
\((n^2+1)(n^2-1)=210m^2\) ・・・② に代入すると、
\(168x(168x+2)=210m^2\)
\(2^3\times x(84x+1)=5m^2\) ・・・③
\(84x+1\) は奇数であるので、③の左辺は \(2\) を素因数として少なくとも \(3\) 個もつ.
\(2\) のみに注目すると、③の右辺は \(2\) を素因数として必ず偶数個持つことになるため、
\(x\) は、\(\displaystyle 2^{\text{奇数}}\) を素因数にもつ.
また、③の右辺は \(5\) の倍数であるから、
\(x\) または \(84x+1\) が \(5\) の倍数となる.
この結果から、例えば \(x\) が \(5\) の倍数として考えてみて、
\(x=2\times5 , 2^3\times5 , 2^5\times5 , \cdots\) を試に代入してみる.
\(x=10\) のとき、
\(n^2=168x+1=1681=41^2\) であるから \(n=41\)
③より、\(2^3\times10\times841=5m^2\)
\(m^2=2^4\times29^2\) より、\(m=116\)
となり、①を満たす自然数の組が \(1\) つ見つかった!
(3)解答
\((m,n)=(116,41)\) を①に代入すると、①は成立する.
したがって、\((m,n)=(116,41)\)
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