【問題】
\(0≦a<\displaystyle\frac{\pi}{2}\) , \(0≦b<\displaystyle\frac{\pi}{2}\) のとき
\(\tan \displaystyle\frac{a+b}{2}≦\displaystyle\frac{1}{2}(\tan a+\tan b)\)
が成り立つことを示せ.
はじめに
ここでは発展的な考え方を使って、不等式の証明を考えます。
基本的な不等式の証明については
にまとめてありますので、そちらをご確認ください。
今回の問題については、おそらく学校の授業では扱いわないと思います。
今まで一度も経験したことのない発想だと思いますので、例題を使って考え方・解答を紹介しますので、それを読んだ後に再度チャレンジしてみてください!
【例題】相加平均・相乗平均の関係の証明
\(a>0 , b>0\) のとき
\(a+b≧2\sqrt{ab}\)
等号成立は、\(a = b\) のとき
【証明】凸関数を利用した証明
上図のように \(y=log_{2}x\) のグラフ上に 2 点
\(A ( a , log_{2}a )\)、\(B ( b , log_{2}b )\) を考える.
ただし、\(0<a≦b\) とする.
このとき、2 点A、B の中点を C とすると、
C \(( \displaystyle\frac{a+b}{2} , \displaystyle\frac{log_{2}a+ log_{2}b}{2})\)
また、\(x=\displaystyle\frac{a+b}{2}\) と \(y=log_{2}x\) の交点を D とする.
つまり D \(( \displaystyle\frac{a+b}{2} , log_{2}\displaystyle\frac{a+b}{2} )\) .
このとき、\(y=log_{2}x\) のグラフは上に凸の関数であるから、
(点 C の \(y\) 座標) ≦ (点 D の \(y\) 座標)
よって、
\(\displaystyle\frac{log_{2}a+ log_{2}b}{2}≦log_{2}\displaystyle\frac{a+b}{2}\)
\(\displaystyle\frac{1}{2}log_{2}ab≦log_{2}\displaystyle\frac{a+b}{2}\)
\(log_{2}(ab)^{\displaystyle\frac{1}{2}}≦log_{2}\displaystyle\frac{a+b}{2}\)
\(y=log_{2}x\) は増加関数であるから、
\(\sqrt{ab}≦\displaystyle\frac{a+b}{2}\)
したがって、
\(a+b≧2\sqrt{ab}\)
等号成立は
( 点 C の \(y\) 座標 ) と ( 点 D の \(y\) 座標 ) が一致するとき、
つまり、点 A と点 B が一致するときであるから、\(a=b\) のときである.
補足
※本問では底を 2 とする対数で考えたが、3 でも 4 でも何でも良い.
※\(y=log_{2}x\) のグラフは上に凸の関数であることは、
数学Ⅲの履修者は \(y^{\prime\prime}\) の符号を考える必要がある.
【問題】解答
【問題】
\(0≦a<\displaystyle\frac{\pi}{2}\) , \(0≦b<\displaystyle\frac{\pi}{2}\) のとき
\(\tan \displaystyle\frac{a+b}{2}≦\displaystyle\frac{1}{2}(\tan a+\tan b)\)
が成り立つことを示せ.
\(0≦x<\displaystyle\frac{\pi}{2}\) で \(y=\tan x\) のグラフは下に凸のグラフである.
(ⅰ) \(a<b\) のとき
A \(( a , \tan a )\)、B \(( b , \tan b )\) とおき、図のように 2 点 C 、 D をとると、
C \((\displaystyle\frac{a+b}{2} , \displaystyle\frac{\tan a+\tan b}{2})\)
D \((\displaystyle\frac{a+b}{2} , \tan \displaystyle\frac{a+b}{2})\)
C と D の \(y\) 座標に注目すると、
\(\tan \displaystyle\frac{a+b}{2}<\displaystyle\frac{1}{2}(\tan a+\tan b)\) が成立.
(ⅱ) \(a=b\) のとき
(左辺)\(=\tan \displaystyle\frac{a+a}{2}=\tan a\)
(右辺)\(=\displaystyle\frac{1}{2}(\tan a+\tan a)= \tan a\)
したがって、\(a=b\) のとき等号が成立する.
(ⅲ) \(a>b\) のとき
(ⅰ)と同様に考えて成立する.
したがって、題意は示された.
最後に
今回のテーマは難易度の高いテーマでした。
経験なしにこのような発想はさすがにできないと思います。
ただ網羅系で有名な問題集である「標準問題精講 数学 Ⅱ 」などにも記載されている考え方になります。
※標準問題精講にはもっと難しい形で出題されています。
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