【2008奈良女子大学】
(1) \(2\) つの正の実数 \(a\)、\(b\) ( \(a<b\) ) に対し、次の不等式を示せ.
( ⅰ ) \(\sqrt{ab}<\displaystyle\frac{a+b}{2}<b\)
( ⅱ ) \(a<\displaystyle\frac{2ab}{a+b}<\sqrt{ab}\)
(2) 次の不等式を示せ.
( ⅰ ) \(\displaystyle\frac{1221}{116}<\sqrt{111}<\displaystyle\frac{116}{11}\)
( ⅱ ) \(\displaystyle\frac{283272}{26887}<\sqrt{111}<\displaystyle\frac{26887}{2552}\)
\(2\) 乗平均平方根・相加・相乗・調和平均の大小関係について
まず結論として、有名な不等式の関係です。大学入試で頻出ですので、結果・証明の流れを覚えておきましょう!
( \(2\) 乗平均平方根 ) ≧ (相加平均) ≧ (相乗平均) ≧ (調和平均)
\(a>0\)、\(b>0\) のとき
\(\sqrt{\displaystyle\frac{a^2+b^2}{2}} ≧ \displaystyle\frac{a+b}{2} ≧ \sqrt{ab} ≧ \displaystyle\frac{2}{\displaystyle\frac{1}{a}+\displaystyle\frac{1}{b}}\)
等号成立は、\(a=b\) のとき
※調和平均とは、「逆数の平均の逆数」のことを言います.
\(\displaystyle\frac{2}{\displaystyle\frac{1}{a}+\displaystyle\frac{1}{b}}=\displaystyle\frac{2ab}{a+b}\) ですから、2008奈良女子大学の(1)は、相加平均、相乗平均、調和平均の証明問題ということです.
※特に相加・相乗平均については、最重要頻出テーマです!
相加平均・相乗平均の関係はいつ使う?使うタイミングの見抜き方(基本)
相加平均・相乗平均の関係はいつ使う?使うタイミングの見抜き方(発展)
不等式の証明について
『 \(A>B\) を示せ』という不等式の証明の王道の解法は、
\(A-B\) を計算して、これが正 ( \(A-B>0\) ) であることを示せばよい.
それぞれの式において差をとり、正であることを示しましょう!
その他の不等式の証明の仕方については、下記に5つの解法をまとめています。
2次試験で数学が必要な方は、頻出・重要な考え方になりますのでご参考に!
(1)解答
( ⅰ ) 相加・相乗平均の関係の証明
(1) \(2\) つの正の実数 \(a\)、\(b\) ( \(a<b\) ) に対し、
( ⅰ ) \(\sqrt{ab}<\displaystyle\frac{a+b}{2}<b\) を示せ.
\(\displaystyle\frac{a+b}{2}-\sqrt{ab}=\displaystyle\frac{a-2\sqrt{a}\sqrt{b}+b}{2}=\displaystyle\frac{(\sqrt{a}-\sqrt{b})^2}{2}>0\)
また、\(b-\displaystyle\frac{a+b}{2}=\displaystyle\frac{b-a}{2}>0\)
したがって、\(\sqrt{ab}<\displaystyle\frac{a+b}{2}<b\)
( ⅱ ) 調和平均・相乗平均の関係の証明
(1) \(2\) つの正の実数 \(a\)、\(b\) ( \(a<b\) ) に対し、
( ⅱ ) \(a<\displaystyle\frac{2ab}{a+b}<\sqrt{ab}\) を示せ.
\(0<a<b\) より逆数をとると、\(\displaystyle\frac{1}{a}>\displaystyle\frac{1}{b}>0\) であるから、
(1) の ( ⅰ ) の結果において、\(a\) を \(\displaystyle\frac{1}{b}\)、\(b\) を \(\displaystyle\frac{1}{a}\) とすると、
\(\sqrt{\displaystyle\frac{1}{b}\cdot\displaystyle\frac{1}{a}}<\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{1}{b}+\displaystyle\frac{1}{a}}{2}\)
よって、\(\displaystyle\frac{1}{\sqrt{ab}}<\displaystyle\frac{a+b}{2ab}\)
両辺は正であるから逆数をとると、\(\sqrt{ab}>\displaystyle\frac{2ab}{a+b}\)
また、\(\displaystyle\frac{2ab}{a+b}-a=\displaystyle\frac{a(b-a)}{a+b}>0\)
したがって、\(a<\displaystyle\frac{2ab}{a+b}<\sqrt{ab}\)
(2)解答
(2) 次の不等式を示せ.
( ⅰ ) \(\displaystyle\frac{1221}{116}<\sqrt{111}<\displaystyle\frac{116}{11}\)
( ⅱ ) \(\displaystyle\frac{283272}{26887}<\sqrt{111}<\displaystyle\frac{26887}{2552}\)
( ⅰ ) \(111<11^2=121\) より \(\displaystyle\frac{111}{11}<11\) .
ここで \(a=\displaystyle\frac{111}{11}\)、\(b=11\) とおくと、
\(\displaystyle\frac{a+b}{2}=\displaystyle\frac{\displaystyle\frac{111}{11}+11}{2}=\displaystyle\frac{116}{11}\)、
\(\sqrt{ab}=\sqrt{\displaystyle\frac{111}{11}\times 11}=\sqrt{111}\)、
\(\displaystyle\frac{2ab}{a+b}=\displaystyle\frac{2\times\displaystyle\frac{111}{11}\times 11}{\displaystyle\frac{111}{11}+11}=\displaystyle\frac{1221}{116}\)、
よって(1) の結果より、\(\displaystyle\frac{1221}{116}<\sqrt{111}<\displaystyle\frac{116}{11}\)
( ⅱ ) \(a=\displaystyle\frac{1221}{116}\)、\(b=\displaystyle\frac{116}{11}\) とおくと、
\(\displaystyle\frac{a+b}{2}=\displaystyle\frac{26887}{2552}\)、\(\sqrt{ab}=\sqrt{111}\)、\(\displaystyle\frac{2ab}{a+b}=\displaystyle\frac{283272}{26887}\)
よって(1) の結果より、\(\displaystyle\frac{283272}{26887}<\sqrt{111}<\displaystyle\frac{26887}{2552}\)
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